常葉大学外国語学部グローバルコミュニケーション学科教授の谷口茂謙先生にインタビューさせていただきました!

常葉大学_草薙キャンパス

今回は常葉大学で教授・国際言語文化研究科長を務める谷口茂謙先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。キャリア教育、パフォーマンス教育、英語教育などの研究をされている谷口先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。

研究背景・専門領域に関する質問

インタビュアー
改めて、今回のインタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、現在取り組まれている研究テーマについて教えてください。

谷口先生

私は、学生時代にシェイクスピアを学びましたが、1990年に専任教員として初めて着任した短期大学では「基礎的なビジネス英語の指導」と「社会人としてのコミュニケーション力の養成」を求められました。

そこで、効果的な指導法を研究する英語教育学や、上手な自己表現のあり方を研究するパフォーマンス学にも関心を広めて学び始めました。

2005年に現在の職場に移りましたが、所属が英米語学科ではないため、社会人基礎力やキャリア教育に関わる科目を中心に担当しています。

インタビュアー
外国語学部での教育活動の中で特に力を入れていらっしゃる分野はありますか。
谷口茂謙先生
谷口先生

本学は、地元静岡の発展に貢献する人材の育成が重要な使命です。そのための教育として、「自分の理想の将来像をはっきりさせること」「チームで協働して課題に取り組む過程を通じて日本語によるコミュニケーション力を向上させること」「静岡の産業への理解を深めさせること」そして、「社会人としてのビジネスマナーを身に付けさせること」を柱にして授業に取り組んでいます

いずれの授業も力を注いでいますが、特に重視しているのは、1年次の科目として担当しているチームでの協働を通じたコミュニケーション力の養成でしょう。初年次で積んだ経験が、後の3年間の成長度を大きく左右するからです。

インタビュアー
キャリア教育の視点から、学生が「自分の強み」や「伝える力」を育てていくうえで、どのような教育が必要(効果がある)とお考えですか?
谷口茂謙先生
谷口先生

1年生の中には「自分に強みなどない」と思っている学生もいます。そこで、私はまず「今の自分はOKと考えよう」と伝えることから始めます。キャリア教育では、仲間ではなく自分自身のこれからの幸せを考えさせます。今の自分はOKと肯定することから将来への模索が始まるのです。

次に「これなら私にもできる」と確信させる経験が必要です。本学では、地元の外国人と交流する会やボランティア活動など、授業の内外で様々な経験が積める機会を設けています。初めての経験を通して、それまで知らなかった自分の一面を発見する学生は少なくありません。

さらに、そこで得た経験や新たに見えた自分を、仲間たちに発表させる機会も大切です。「私はこんな素敵な経験をしたよ」という思いがあるからでしょう。異文化やボランティアの体験を報告する学生は、見るからに生き生きしています。

発表の準備段階では、わかりやすい文章や資料の作り方、聞き手の記憶に残る話し方などの指導も大切です。仲間の印象に残る発表ができた経験は、学生に更なるプラスの影響を与えます。

学生自身が「伝えたい」と思える経験をし、それを発表させる教育。学生が「自分の強み」を見い出し、他者に「伝える力」を育てるうえで、大きな効果をもたらすと考えています。

キャリアの意思決定のプロセス

常葉大学

インタビュアー
納得感のある進路選択をしていく学生には、どのようなスキルや自己理解が備わっていることが多いでしょうか?
谷口茂謙先生
谷口先生

キャリアを「職業」だけではなく、「人生全体の幸せ」と捉えられる学生は、進路選択に自信を持っています。人生100年時代を生きる学生たちですが、生涯現役ではなく、一定の年齢で職業を引退し、残りの人生は家庭や自分の趣味を大切に生きたいと願う人が多いでしょう。そのため私は、70歳の自分の理想像を描くように勧めています。例えば「家族でペンションを経営している」といった夢を実現した自分の姿です。

夫婦で経営して、子供も手伝ってくれるとしたら、子供は30歳ぐらいでしょうか。だとすれば、自分は遅くとも40歳で子供を持つことになります。それには、35歳ぐらいで結婚して…というように、家庭生活から、自分の人生設計が具体的に見えてきます。ペンション経営には、ホテルでの経験が不可欠だな。ホテルに就職するには、学生時代にこれを勉強しよう。というように、今やるべきことが順番に見えてくるのです。

もちろん、人生が計画どおりに進むとは限りません。しかし、計画を立てて、仕事、家庭、自分の生活をそれぞれ調整する力を培った人は、突然に計画の変更を余儀なくされても、その力を活かして新たな人生を設計できます。引退後の自分の理想像を描ける学生は、自身の進路選択にも納得感を持ちやすいのです。

インタビュアー
外国語の運用能力は、異業界・異職種へのキャリアチェンジにも有効でしょうか?
谷口茂謙先生
谷口先生

もちろん有効です。しかし、語学力だけを武器に転職に挑み、実際に採用される人は何人いるでしょうか。明確なデータを持ち合わせてはおりませんが、転職市場で求められる語学レベルはかなり高く、語学力だけを頼りに転職することは極めて難しいと思われます。

その一方で、外国語の力は、他の能力と組み合わせることで、強力な武器へと変わります。私の所属する学科では、スペイン語、ポルトガル語、中国語、韓国語のうち、2言語を学びます。いずれか1言語だけで勝負することは難しいですが、複数言語ができる人材は、一般的なレベルでも高く評価されます。

本学外国語学部の卒業生であり、現在は非常勤講師として教えてくださっている牧野智一先生。この方は、日本政府の行事や東京オリンピックなどで、公式通訳を務められた日本人通訳の第一人者として知られています。牧野先生はドローンの免許を取得されました。同業者の間でもドローンの免許を持つ通訳は貴重だとのことです。

牧野先生がよく学生におっしゃる「何か他の能力に加えて外国語ができれば、あなたの語学力は大きな武器になる」というお言葉は、学生だけでなく、異業界・異職種へのキャリアチェンジを目指す社会人の皆さんにとって、大きな励ましになるはずです。

AI時代の転職に向けての心構え

インタビュアー
オンライン化が進む中で、「キャリア機会の広がり」に対応するためにどのような能力が必要ですか?
谷口茂謙先生
谷口先生

AIを上手に使いこなす能力です。というと、時流に合う答えのようですが、根本的な能力は「自己表現力」です。広い意味ではコミュニケーション力です。

AIと対話するには、知りたい事柄について、自分がすでにどこまで理解しているかを説明し、問いを具体的に伝える必要があります。

AIは機械ですが、自分の課題の達成を支えてくれる大切な相棒、即ち人だと思う場合も多いはずです。そのため、上手に自分を表現して理解してもらい、相手の言うことに耳を傾けてしっかり理解する力が必要になるのです。

相手から情報を得るには、まず自分の情報を与える方がうまくいきます。Give & Takeの語順です。自分の情報を相手にわかってもらうには、自己表現の力が第一に求められます。

オンライン会議では、画面に映る範囲が限られているため、ジェスチャーはほぼ使えません。話し方や表情による自己表現の重要性はより増しています。

無料のウェブ研修会などでは、カメラオフで参加する場合もありますが、チャットで質問したことをきっかけに、後で講演者とつながり、新たなキャリアの糸口となることもあるでしょう。質問する内容も重要ですが、質問文にはその人自身が表れます。これからの時代に新たなチャンスをつかむにも、自己表現力は不可欠なのです。

専門的視点からのアドバイス

インタビュアー
キャリアの転機で悩んでいる学生に対して、いま伝えたいメッセージがあれば教えてください。
谷口茂謙先生
谷口先生

キャリアの転機で悩む理由は、いずれの選択肢にも幸と不幸があるからです。どちらが良いかわからない。そんなときはどちらを選択してもいい。これは確かなことです。キャリアは福引が当たるようなものではありません。選んだ時点であなたの答えは出ない。大切なことは、選んだキャリアで精一杯がんばることです。そうすれば、その道にしかない幸せが見つかります。人生では、今いる場所で最善の努力をすることによって、新たな道が開けるのです。

シェイクスピアの研究に燃えていた頃、やっと就職できた職場で、私は未経験の仕事を与えられました。それに真正面から取り組んだことで研究の幅が広がりました。現在の職場では「余人をもって代え難い人材」になったと、勝手に思っています。その根拠となる能力は、最初の職場でがんばって身に付けたものです。

選んだ場所で与えられた仕事に真正面から取り組み、新しい道が開けた時に後ろを振り返る。自分が来た道についた轍の遠くに見える曲がり角。あの時、この道を選んでよかった。そう思えるように選んだ道でがんばるのです。つまり、選択はどちらでもいい。選んだ後の生き方次第で、あなた自身がその選択を正しくできるからです。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。転職には不安や迷いはつきものですが、選んだ道でがんばることで選択を正しくできるということがわかりました。

常葉大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、常葉大学外国語学部教授の谷口茂謙先生です。

名称 常葉大学
所在地 〒422-8581 静岡県静岡市駿河区弥生町6-1
大学HP https://www.tokoha-u.ac.jp/