今回は安田女子大学ビジネス心理学科で講師を務める山田涼馬先生に、「キャリアにおける自己理解と意思決定の重要性」についてインタビューをさせていただきました。認知心理学、産業・組織心理学、産学連携を研究されている山田先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
現在研究されている分野・具体的なご活動内容について
ビジネスに関わるステークホルダーの人たちの心理を検討する「産業・組織心理学」を担当しています。私はこれまで、「消費者は、日常生活の中で出会う製品やサービスのどこに魅力を感じ、購買あるいは利用しようとするか」ということに興味を持つ企業と、産学連携することで、新しいビジネスの創出にも従事してきました。
現在は、これらの研究・経験を、学生の皆さんにお伝えしています。
企業が顧客との関係性を構築し収益を得る、いわゆるマーケティングにおいて、心理学は、顧客の心理を正確に理解するために非常に有効です。
例えば、ビジネスを始めるにあたっては「この製品は、こうした顧客に、このように流通させ、この価格で売り、こうやって収益を得る」というビジネスモデルを立て、顧客として想定した人々に調査を実施して検証します。
しかし検証する際、モデルに一致する結果ばかりに注目し、モデルと反する結果を無視してしまうことがあります。これを「確証バイアス」というのですが、このバイアスによって、ビジネスが失敗することもあるわけです。
こうしたバイアスにとらわれず、正確に顧客の心理を理解し、ビジネスを構築する重要性を、授業でお伝えするとともに、企業とのフィールドワークでも実践しています。
キャリアの意思決定・自分自身との向き合い方
人間には「現状維持バイアス」という心理傾向があります。新しい変化を目前にしたとき、変化することで得られるものがあったとしても、何かを失ってしまう可能性を重視してしまい、現状を維持してしまうという傾向のことです。
キャリア転換の場合、新しい職場で人間関係や業務の負担が増加する可能性を重視してしまうということもあるでしょう。しかし、このような不安は、あって当然です。なぜなら、キャリア転換する先の人間関係や業務配分の加減などは、事前には知りえないことだからです。ただ、知りえない未来のことは、どうなるかまだ確定していないことです。
その一方、「キャリア転換したいと思った原因やきっかけ」は、現在、確かに存在していることです。未確定な事項に不安を抱くよりも、確かな事項に基づいて意思決定をすることが重要ではないでしょうか。
キャリア形成と意思決定の心理学的アプローチ
先ほども述べたように、人間は偏った思考によって、時に非合理的な意思決定をしてしまうことがあります。これを総じて「バイアス」と呼びます。
バイアスにはさまざまなものがあり、とてもここで書ききることはできません。その上、どのバイアスを強く持っているかには個人差もあります。
バイアスに従って非合理的な行動をしてしまった経験は、だれにでもあると思います。それで良い結果につながったこともあるでしょうが、「他に合理的な行動をとることもできたのに、非合理的な行動をとった」という点が危ういのです。
これを踏まえると、重要なことは、自分自身がどのようなバイアスを強く持ってしまっているかに、気づくことだと思います。自分が、どのようなケースで非合理的な行動をしてしまうのかを知っておくと、キャリア転換をするとき、合理的な行動をとることができるのではと思います。
専門的視点からのメッセージ
新しいビジネスを創出する業務に従事していたときに、多くの場面で言われたことは「シーズプッシュではなく、バックキャスティングで考える」ということでした。つまり、すでに持っている技術やノウハウに基づいてビジネスを計画・実施するのではなく、「今から創出するビジネスで顧客の方々にどのような価値を提供でき、どのような未来を実現できるのか」を明確に設定し、そこから逆算してビジネスを計画・実施するという考え方です。
これはキャリア転換にも言えることだと思います。もちろん、手持ちの資格や技能、あるいは自己分析に基づいてキャリアを決めることも重要だと思います。
しかし、現在の自己を分析するあまり、そこから抜け出せなくなってしまい、就職活動を進められなくなってしまうケースもあります。まずは、自分自身がどう生きていきたいかという未来を現実的に考え、その未来から逆算して、今やるべきことを考えることが大切だと感じています。
安田女子大学の基本情報
今回インタビューにご協力いただいた先生は、安田女子大学で講師を務められている山田涼馬先生です。
| 名称 | 安田女子大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒731-0153 広島県広島市安佐南区安東6丁目13番1号 |
| 大学HP | https://www.yasuda-u.ac.jp/ |