金沢工業大学の宮里心一先生にインタビューさせていただきました!

金沢工業大学

今回は金沢工業大学で教授を務める宮里心一先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。工学教育やメンテナンス工学、コンクリート工学を研究されている宮里先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。

現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について

インタビュアー
改めて、インタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、現在取り組まれている研究テーマや、特に力を入れている研究内容について教えてください。

宮里 心一先生_金沢工業大学
宮里先生

研究テーマの一つ目は、通学や通勤等の市民生活に欠かせない、道路や鉄道等の社会インフラを安全に長く使い続ける研究です。構造物の多くは昭和時代に建設され、現代では老朽化が進んでいます。

特に、金沢の自然環境は厳しく、劣化のスピードが速いです。もし使用できなくなると多大な迷惑がかかるため、点検によって劣化を見つけたら、必要に応じて補修しています。

このようなメンテナンス技術は、2000年以降に要望が高まり始めましたが、いまだ完成していません。だから私は、情報工学や電気電子工学を取り入れたモニタリング、またFRPやステンレス等の耐久性の高い材料の土木分野への適用を研究しています。

二つ目は、環境に優しいグリーンマテリアルです。グリーンマテリアルは、副産物を有効活用する地域環境に優しい材料として、火力発電所で産出される石炭灰をセメントに混和し、長寿命なコンクリートを実用化しています。

また、地球温暖化の抑制に資する材料として、二酸化炭素を吸収するコンクリートを開発しています。カーボンネガティブ社会の創造を目指し、機械工学科と連携しながら3Dプリンティング技術を用いてセメント系材料を造形しています。

キャリアの意思決定のプロセス(研究・実務)

インタビュアー
研究・教育・学会活動・社会貢献を同時に担う中で、先生が大切にしてきた判断軸や優先順位は何でしょうか。学生が「自分に合った進路」や専門分野を見つけるために、学部・大学院時代に意識してほしいことはありますか。
宮里 心一先生_金沢工業大学
宮里先生

高校3年生の夏休みのことですが、ヤンバルと呼ばれる沖縄県北部で土木事業に携わっていた祖父が亡くなり、私は葬式に参列しました。そのとき弔問者から、「あなたのおじいさんには、色々と助けてもらった」との言葉を頂きました。

この経験から、「自身が亡くなった後でも地元の人々に感謝される職業に就こう」と思い、土木の道を歩み始めました。そして、進級する際には、大学内だけではなく、実社会で活躍している先生の下で学びたいという思いを持って研究室を選択しました。

希望していた恩師の門下生になってからは、国内外の現場や学会等に連れて行って頂き、各種の技術のみならず、それを開発し実用する技術者の人柄まで学ぶことができました。このように、体感することを通して、志すべき目標を描き、周囲の助言も踏まえた上で、自分の意志に基づくキャリアを選択してきました。

職業選択・企業選びに関する質問

インタビュアー
建設・インフラ・公共分野を志す学生が、学生のうちから意識しておくと良いポイントは何だと思われますか。災害対応やインフラ老朽化の問題を踏まえ、今後10年で土木技術者に求められる役割や働き方はどのように変化していくとお考えですか。
宮里 心一先生_金沢工業大学
宮里先生

2024年に石川県では、能登半島地震や奥能登豪雨が発災しました。金沢での生活への影響は数か月間でなくなりましたが、能登ではまだまだ復旧や復興に向けた取組みが必要な状況です。

地元の大学教員として、地域に寄り添いながら、その一助を担っています。同地域では、少子高齢化も一層進んでおり、社会問題が深刻化しています。

さらに、冬の日本海からの激しい季節風等で、コンクリート構造物の劣化も進行しています。これらの前例の無い複雑な課題に対して、理工学と社会学を融合しながら、自ら考え解決を図っているところです

AIを身近に活用できる時代になっても、未知なる研究では正解を容易に得ることはできません。したがって、課題解決をするためには、1人ではなく複数の仲間と、特に異分野の方々との共創が欠かせないと感じています。

今後の土木技術者は、自らの幹となるスキル・能力を磨くだけではなく、このような異分野融合や、さらには世界の技術者・研究者と協働しながら、社会課題を解決するプロジェクトに携わる機会が多くなると思います。

学生・キャリア形成初期の方へのアドバイス

インタビュアー
社会インフラ・環境・人材育成に携わられている先生から、進路に悩む学生に伝えたいメッセージがあればお願いします。
宮里 心一先生_金沢工業大学
宮里先生

社会インフラを対象にする土木の仕事は、現在のみならず将来の、地域社会のみならず地球規模の、生活や環境に直結します。このように、多くの人々に快適で安心を提供することから、well-beingを実現できます。

したがって、進路に悩んだ際には、「仕事」として捉えるのではなく、自分にとって「好きなことに携わる」と考えてほしいです。

自然を相手にしたり、人々を相手にしたりするので、時には自分の望まない条件で就業することもあり得ます。

しかし、その時間は決して長くはなく、一方で、その貢献は長く広く好影響を与えることができます。自分を信じて、仲間と啓発し合いながら、努力して欲しいと願います。だからこそ、「楽(らく)」では無くても「楽しい」と思える環境で、仕事を進めることが望ましいです。

なお、同じ職種でも、社風は異なりますので、短期間の1社へのインターンシップだけではなく、本音を語ってくれる卒業生や、共同研究先の技術者・研究者の話も聞きながら、自分に合った進路選択をすることをお薦めします。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。キャリア選択に悩む際には、自分の「好きなことに携わる」ということを意識したいと思いました。

金沢工業大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、金沢工業大学で教授を務められている宮里心一先生です。

名称 金沢工業大学
所在地 〒921-8501 石川県野々市市扇が丘7-1
大学HP https://www.kanazawa-it.ac.jp/