今回は明治大学で准教授を務める前川佐理先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。「高効率な電力変換器とモータドライブ技術の研究」を研究されている前川先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について
専門分野はパワーエレクトロニクスとモータドライブです。研究室では企業との共同研究を基盤に、実用性の高い技術開発を進めています。
授業では電気回路理論の基礎から始まり、変圧器、直流電動機、同期電動機などの電気機器に関する講義を担当しています。研究室のゼミでは電気自動車や産業用モータを対象に、高効率な電力変換方式や高応答・高精度な制御技術の研究を行っています。
永久磁石の磁力を運転条件に応じて可変化し、最適な駆動を実現する「可変磁力モータ」を開発し、世界で初めて実用化に成功したことです。
近年は地球温暖化対策として、パワーエレクトロニクスを活用したCO2削減に取り組んでおり社会貢献を意識した活動に力を入れています。
電気自動車の普及に伴うモータ、インバータ、電池、制御方式の研究がとくに注目されています。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス
大学卒業後、東芝の研究所に勤務し、パワーエレクトロニクスやモータドライブの研究に携わりました。自分の知識や技術をより広く社会や多くの人々に伝えたいという思いから、企業の研究職から大学教員への転身を決意しました。
大学の専任教員というのは募集が少ないため、早い段階から計画的に対外的に明示できる研究業績を積んでいきました。
企業や大学の先生方など、社外の多くの方々とのつながりを深めることを大切にしてきました。数年先で芽が出るような活動を地道に進めてきたことが現在のキャリアにつながっていると感じています。
すぐに結果につながらなくても、どこかで何かにつながるような活動を続けていくことが、このようなキャリアを描く上では重要と感じています。
現在の自動車業界に関する質問
研究室では自動車メーカーや自動車部品メーカーとの共同研究などを行っており、企業の方々のご意見を伺う機会も多いのですが、現在の自動車業界の変化は非常に大きく、かつスピードも早い「100年に一度」といわれるような大きな変革期を迎えていると感じます。
報道ではEV化の流れが失速しているとのニュースも聞かれますが、開発現場では数年先を見据えた製品開発・研究を行っています。依然として「EV」すなわち電動化における競争力を高めるための開発が優先されており、電気、制御、熱設計などの知識を持った若手技術者への期待は非常に高くなっていると感じています。
自動車の電気設計には、ある部品が故障した際にシステム全体にどのような影響があるかを明確にする「FMEA(故障モード影響解析:Failure Mode and Effects Analysis)」などの特有の設計ルールがたくさんあります。
これらの知識や経験は、自動車の多くの部品開発で共通しており、部品メーカーで経験を積み完成車メーカーへの転職を目指す際にも有用だと思います。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス

これから転職を考えている方は、色々な不安や迷いなどがあると思います。まずは、自分自身の経験や知識を客観的に見ることができるような活動をすることを薦めたいと思います。たとえば、私のような研究職には、学会活動やそれを通じた技術者同士の交流になりますが、製品開発寄りの方であれば展示会での交流や各種の技術セミナーなどでの交流などがあるでしょうか。
積極的に交流の機会を持つことで自分の能力などを客観的に見られるようになります。それが、現実的な転職などを進めていくための材料にもなり、活動自体が新しい人脈形成のきっかけにもなると思います。
これからの時代は大きな変化が伴いますが、AI、CAE(Computer Aided Engineering)などをはじめとする様々なツールが揃ってきているため、「個人」でできることの範囲が広がっていると感じます。この「個の力」を伸ばして生きていくことを常に意識することが皆さんの未来を描く上で何よりも重要だと考えます。
明治大学の基本情報
今回インタビューにご協力いただいた先生は、明治大学で准教授を務められている前川佐理先生です。
| 名称 | 明治大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒214-8571 神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1 |
| 大学HP | https://www.meiji.ac.jp/ |