今回は武庫川女子大学で教授を務める本田一成先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。サービス産業の労働問題、女性労働、非正規労働を研究されている本田先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
研究背景・専門領域について
私は日本の労働問題について研究してきました。もともと国際比較から始めたのですが、近年は日本の実態や労働組合の役割についてリサーチしています。
担当授業は、「組織行動論」「人的資源管理論」「労使コミュニケーション論」などです。これらは全て、働く人々に焦点を当て、短期的には現在の職場、長期的には職業人生に関わる働き方やマネジメント、労使関係を考える内容です。そのための1つのキーワードがキャリアだと思っています。
企業も個人もキャリアをマネジメントするという視点は大切で、卒業後に「キャリア・マネジメント学」の学位を取得できる大学もあるようです。
近年、日本特有の「メンバーシップ型雇用」がよく取り上げられ、議論されています。日本の大企業は、正社員として、採用から退職まで、育成や待遇を含めて人事部が集権的に管理するので、働く側は囲い込まれ、企業の要請に応えなければなりません。
多くの場合、仕事内容の変更や転勤、長時間労働などが求められるため、転職や起業などを含め企業外へ飛び出すキャリアを志向する人には窮屈かもしれません。ライフコースを考えると、女性はそうした企業のメンバーを続けるのが難しかったり、避けたりするのが現状です。
キャリアの意思決定・自分自身との向き合い方

仕事だけでなく、生活のことを考えて我慢したり、何かを犠牲にするのはやめようと(笑)。仕事だけの人生にはしたくないと考えていました。家族や友人との時間、自分だけに使う時間も大切にしたかったからです。
そして、定住も志向していませんでした。実際、ご縁にしたがい2つの研究所と2つの大学(共学と女子大)に勤務し、東京と大阪で暮らしました。進学するまでは故郷の愛知県で暮らしていたので、狭い日本の中でですが、中部、関東、関西とあちこちで生活してきたことで常に新鮮な気持ちがしています。
キャリアの当初は、留学や国際比較研究を経験していろいろ気づいたため、海外を拠点にした仕事をしようとしていたはずなのに、私的な事情もあり、いつの間にか国内派になってしまいました。確かに日本は生活しやすい国ではありますが、しっかりと海外志向を保てよ、もっと新しい環境にチャレンジしろよ、と言いたいですね。
職業選択とキャリア形成について
キャリア形成の失敗を感じたことはありません。失敗を重ねないと成功しないので失敗ではありません。
例えば、失敗が多く許される企業と失敗を許さない企業があるとすれば、前者では失敗件数が多いが教訓から学習する機会が多い。後者は、見た目の件数は少なくても隠された失敗が多く、その教訓も失うので、前者の方がパフォーマンスが良いという研究もあります。前者は働く人々にとって心理的に安全な職場でもあります。
「遠回り」はちょくちょく感じますが、焦ったことはありません。例えば、依頼された内容で難しい本を書くことになった経験があります。その時は「3年間が飛んだ」と思っていましたが、迷うこともなく集中していたし、フィードバックも多く、後になってから貴重な体験だったと悟りました。
若い世代はこれから激動に突入ですね。1つは、労働力人口の減少による働き手の不足。この言葉では済まず、労働力の急縮とか、枯渇とかが見えてくるでしょう。労働力がもっと貴重になり、女性、高齢者、外国人、AIなど総動員体制になっていきますので、危機には違いありませんがチャンスとみてほしいところでもあります。
もう1つは、メンバーシップ型雇用が崩れる可能性が高い点です。一度入社した会社に勤め続けるのが当たり前でなくなります。働き方の種類が広がるとともに個別の契約に基づく働き方に様変わりしていきますので(私は「総契約社員化」と呼んでいます)、自分らしく働くためには、仕事の選び方や働く上でのルールを知っておくことが大切です。今のうちから少しずつ知識を増やしておけば、選択肢は確実に広がります。
先生の専門的視点からのメッセージ
自らのキャリアを考える場合、世界の中の日本、日本社会の中の企業社会、企業社会の中の職場と自分、と考えてみて、どのような職業人(労働者)、生活人(生活者)でありたいかを自問自答してほしいです。例えば、ジェンダーバイアスが激しい、少子・高齢化と人口減少が止まらない、家族主義に固執している、同調圧力がきつい、タテ関係がしんどい、ハラスメント体質など。皆さんは日本社会や企業社会をどう見ますか。
みんなと同じように順応しますか、それとも抵抗したり反発しますか。そう考えてみて、分からない点が出てきたり、うまく考えられないのなら、それが勉強すべき点です。学生の時だけでなく社会人になっても勉強は続きます。仕事に必要な情報を集めたり、AIと対話するだけでなく、なりたい自分を見失わないようにして欲しいです。
仕事は人生の一部です。仕事だけでなく、どんな人生を送りたいかも考えてみてください。自分らしい生き方を求めることが、納得できるキャリアを進むことにつながります。
武庫川女子大学の基本情報
今回インタビューにご協力いただいた先生は、武庫川女子大学経営学部で教授を務められている本田一成先生です。
| 名称 | 武庫川女子大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒663-8558 兵庫県西宮市池開町6-46 |
| 大学HP | https://www.mukogawa-u.ac.jp/ |