愛知教育大学の片山悠樹先生にインタビューさせていただきました!

愛知教育大学01

今回は愛知教育大学で准教授を務める片山悠樹先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。能力観や教育社会学、職業教育などの研究をされている片山先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。

現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について

インタビュアー
改めて、今回のインタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、現在のご研究内容や教育活動について、とくに力を入れていらっしゃる分野をお伺いできますでしょうか?また、先生のご研究から「若者の進路選択」には、どのような特徴があるとお考えですか。

片山悠樹先生_愛知教育大学
片山先生

昨年、『就「社」社会で就「職」する若者たち』(学文社)という本を出しました。「就社社会」とは、「職業」ではなく、「会社」に就職するという日本の労働市場の特徴を指していますが、「職業」に就職しているという意識を持った人たちもいます

美容師がその典型例で、「お仕事は何ですか?」と尋ねると、勤務先ではなく「美容師です」と答えるはずです。私は「職業」を中心にキャリアを形成する若者を追跡調査していますが、この研究テーマに取り組んでいると、「この職業で働きたい」と強い希望を持ち、そこにやりがいを感じる若者たちがかなり多いことを実感します。

もうひとつ取り組んでいる研究テーマは能力観です。最近、就活中の若者たちがMBTIなどの性格診断を利用していることをよく耳にします。

こうしたことの背後には、性格までも“能力”と見なしてしまう社会の状況があるのではないかと考えています。自身の性格すらも能力と考えてしまうことに、私は疑問を抱いているのですが、それを推し進める「何らか」の力を理解したいと思っています。

キャリアの意思決定のプロセス(研究・実務)について

愛知教育大学02

インタビュアー
先生がキャリアを築かれる中で大切にしてきた判断軸や優先順位は何でしょうか。
片山悠樹先生_愛知教育大学
片山先生

私は自身のキャリアを考えるときには、いつも「固執しすぎない」を心にとどめています。私の能力や仕事は「誰か」に評価されますが、人によって評価は異なります。

また、ときに「運」にも左右されることがあります。キャリアの理論には「計画的偶発性理論」というものがありますが、この理論は予期せぬことがキャリアに影響を及ぼすことを主張しています。

とはいえ、人によって評価が異なる、運であるという理由で、努力したり準備したりすることが無意味であるというわけではありません。つまり、必ずうまくいかないこともあるので、その時にはうまくいかない原因のすべてを自分に帰属させ、自分を追い込む必要はないということです。

ここ十数年、「コミュニケーション能力を身につけましょう」と盛んに言われていますが、私にはそれが一体何を指すのか、いつも疑問です。コミュニケーションは個人の能力ではなく“関係性”の問題です。

それを一律に“能力”と定義して個人が身につける必要があることを主張することに、強い違和感を覚えています。

キャリア形成と意思決定に関する知見

インタビュアー
10年後、評価される能力はどのように変わるとお考えですか。
片山悠樹先生_愛知教育大学
片山先生

日本社会、とくに会社では“仕事”と“能力”が結びつかないことが多々あります。それは、会社での職務の扱い方に特徴があるためです。

例えば採用当初、営業で働いていた人が、数年後には経理に異動することがあります。ただ、営業で求められる能力(例えば、プレゼン能力)と、経理で要求される能力(正確な計算処理など)は異なります。

ところが、会社では職務を頻繁に異動するため、「どんな能力を身につけるべきか」が曖昧になりがちです。こうした社会のなかでは、自分たちに必要な能力を自覚することはなかなか難しいと思います。

ですから、大学生にはまずは自分にとって面白いと感じることやもっと知りたいと思えることを専門にしていただきたいです。その延長線上に、自分に必要な能力が獲得できればよいのではないでしょうか。

学生・キャリア形成初期の方へのアドバイス

インタビュアー
進路に悩みながら学んでいる学生に向けて、研究者の立場から伝えたいメッセージがあればお願いします。
片山悠樹先生_愛知教育大学
片山先生

私は大学生に対して「自分の進路をしっかり考えなさい」と言ったことはほとんどありません。自分自身がしっかり考えてこなかったこともあり、説得力がないからです。

ただ一方で、「あまり自分を追い詰めないでほしい」ということは伝えます。「こうしなければならない」という思い込みで自分の首を絞める必要はありません

就職して合わないと感じたら、辞めて次を探せばよいのです。「適職」という考え方に惑わされすぎるのも危険です。

私自身、就職氷河期を経験し、同級生の多くが就活で苦しむ姿を目の当たりにしてきました。うまくいかないと、人は「自分が悪いのでは」と考えがちですが、実際には環境や運の要素がかなりあります。

だからこそ、「必要以上に自分を責めなくていい」というメッセージを、常に伝え続けています。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。転職には不安や迷いはつきものですが、評価に固執することなく、キャリア選択していきたいと思いました。

愛知教育大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、愛知教育大学で准教授を務められている片山悠樹先生です。

名称 愛知教育大学
所在地 〒448-8542 愛知県刈谷市井ケ谷町広沢1
大学HP https://www.aichi-edu.ac.jp/