今回は愛知学院大で准教授を務める油井毅先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。アントレプレナーシップ、製品・サービス開発、デザイン思考、ベンチャービジネス、チームワーク科学などを研究されている油井先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について
アントレプレナーシップとデザイン思考による製品・サービス開発を専門としています。実際に学生ベンチャーを起業したり、商品化を目指すチャレンジもしています。
また研究領域の開拓を目指して例えばワークショップのときに発話量、笑顔やうなずきなどの動的データを計測し、チームのアイデアの評価と組み合わせて分析するようなチームワーク科学にもチャレンジしています。
大学の授業やゼミではこれまで高校時代に行ってきた正解を見つける活動ではなくて、問題を見つける人になってほしいという教育をしています。ゼミでは、日本で最大の製品開発コンペティションである「Sカレ」に参加し、アイデア企画や販売実績をもとに総合優勝を勝ち取ることができました。
企業からテーマをいただき、解決策を考えるプロジェクトを7年間継続して取り組んでいます。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

私は、新卒でエネルギー系の商社に入社し、5年間営業やM&Aの業務などを行ってきました。その後、大学職員に転職した際に、経営課題解決のために理論を学びたいと思い、社会人大学院に通い始めたことが、研究者としてのはじめの一歩になります。
修士課程、博士課程ではデータ分析を行っていました。データドリブンでは、根本的な新しいことの発見が難しいと悩んでいたところ、博士課程の途中に「デザイン思考」というユーザードリブンの考え方に出会いました。その後、専門をアントレプレナーシップの分野に移行することにしました。
新卒で入社した会社では、地域のガス販売店の社長さんや従業員の方に育ててもらいました。また、M&Aや事業承継の現場を経験しました。このような実体験がスタートアップやベンチャー企業の研究分野での興味関心につながっていると感じています。
キャリア形成と意思決定に関する知見
30歳ぐらいまでは、自分が少し関わっていただけの「やった気になる仕事」も多くこなしてきた気がします。例えば、今月の予算が達成できそうであれば、案件を上司に隠して翌月を楽にしたりなど、この先もこのような仕事の向き合い方で本当に良いのか悩みました。
このような経験があったため、研究者になれた後は社会にインパクトを残せる仕事を重視しています。研究も先人のレールを歩き深めるだけではなく、チームワーク科学など新たな研究領域の開拓にもチャレンジしています。
私はアカデミックなキャリアではなく、サラリーマンを経て大学教員になった人間です。遅咲きだからこそ、自由にそして研究分野を俯瞰的に見れていると感じています。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス

18歳の大学受験の偏差値で人生が決まることはありません。人生設計は長期戦ですが、自分の可能性を自分で否定しない生き方を常に心がけてほしいと思います。
心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏の提唱するフロー(没頭)の概念にも通じる、苦労せずともできてしまうこと、すなわち他者にとっては困難でも自分にとって自然にできることにこそ、天職の種が潜んでいると考える視点も重要です。個人の内発的動機づけに基づく活動は、高いパフォーマンスと持続的な充実感をもたらします。
さらに「自分は何を大切にし、何に価値を感じているのか」といった自己の軸を明確にし、それを信じる姿勢も不可欠です。ただし、ここで強調したいのは、自分らしさやOnly Oneの美徳が自己満足に終わってはならないという点です。
自分らしさとは、個性を主張することではなく、それが「他者や社会とのどのような関係性の中で意味を持ち得るのか」を考えることが重要となります。言い換えれば、自らの思いや観念が、「社会にどのような価値を提供し得るのか」を見つけていくプロセスこそが、人生のビジョンを形づくる鍵となります。
愛知学院大学の基本情報
今回インタビューにご協力いただいた先生は、愛知学院大学経営学部で准教授を務められている油井毅先生です。
| 名称 | 愛知学院大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒462-8739 愛知県名古屋市北区名城3-1-1 |
| 大学HP | https://www.agu.ac.jp/ |