四天王寺大学の天野了一先生にインタビューさせていただきました!

四天王寺大学_学舎

今回は四天王寺大学で教授を務める天野了一先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。産学連携、ベンチャー起業、地域産業などを研究されている天野先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。

研究テーマ・起業家教育への取り組み

四天王寺大学_天野了一先生研究室foodtruck

インタビュアー
改めて、インタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、研究テーマや、授業・ゼミで特に力を入れられている内容について教えてください。

天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

四天王寺大学の天野です。みんなからは、「あまやん」と呼ばれています。

海外の途上国における日本人若手起業家の活動や、起業家同士の相互支援ネットワークの形成に関する研究をしています。異なる立場の起業家がなぜ途上国に来たのか、どのような環境で何に挑戦し、協力しあって事業を成長させていくのか、現地での調査を行なっています。

一方で、身近な消費行動や文化に着目した研究にも取り組んでいます。例えば、観光客には人気があるにも関わらず、地元の人はほとんど購入しない「お土産専用商品」の成立過程や、無料の買い物である「ふるさと納税」の制度下で、地域らしさをどのように商品化するのかなどの起業家の活動を研究しています。その他、トイレや紙おむつ、トイレットペーパー、便器など、人の「しも」に関わる商品が生活様式や価値観、社会や文化をどのように変えてきたのかというテーマにも関心があります。

授業やゼミでは、「激動する資本主義社会を、自ら価値を創造するプレイヤーとして自由に生きる」を理念に掲げています。ただ給料のため働く労働者として企業に就職することをゴールとするのではなく、起業力、副業力を育てるため「起業の実践型教育」に力を入れています。

インタビュアー
「起業家精神」とはどのようなものでしょうか。

天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

起業家精神とは、事業を営むことだけではありません。自ら考え、行動し、自分の人生を主体的にデザインする力そのものです。

私は経営学を「会社を経営するための学問」ではなく、「人生を経営するための学問」と捉え、単なるサラリーマンの育成・量産の予備校ではなく、経済的に自立した「自分らしい人生」を切り拓く力を育むことを目指しています。

投資による資産形成や金融リテラシーも、現代には欠かせない要素です。ゼミではNISA口座の開設から、お小遣いからの株式投資にも挑戦し、企業を分析し、長期的な視点で資産形成を実践する習慣をつけます。起業と投資ができたら、お金のために嫌な仕事なんてしなくてもOK!

インタビュアー
ベトナム・ダナンでの起業研修プログラムなど、海外での教育経験を踏まえて、日本の若い世代に伝えたい「グローバルな視点」はありますか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

我々は、大阪市民、兵庫県民、日本国民である以前に、地球市民、宇宙の一員である、ということです。それを意識、体感するために、ぜひ、学生のうちに海外に行き、さまざまな世界の国の空気を吸ってみてください。世界の人々の価値観、文化、習慣、生活は様々で、日本でこれまで「あたりまえのこと」と思っていた常識が崩れ去っていきます。そしてそのギャップを理解し、自分はいったい何ができるかを考え、新たなチャンスを見つけて、やったことのない、面白そうなことに挑戦してみてください。

学生時代に自分で試した体験が、残りの長い人生の価値観を作っていきます。また、学生の友人は学生時代にしかつくれない、一生の財産です。時間と体力のある学生時代は、世界を舞台にする「地球市民」になって人生を変えていく最大のチャンスです!お金などなくてもなんとかなります!グローバルチャレンジを全力で応援します。

キャリアの転機で実践した意思決定とは

天野了一先生_研究室

インタビュアー
研究者・教育者としてキャリアを重ねる中で、活動を続ける支えになった習慣や考え方はありますか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

私の行動の原点には、祖父から受け継いだいくつかの言葉があります。小学生の頃、祖父が亡くなる間際に枕元で私に言った最後の言葉が、「何かわからないものがあったら、絶対に食べてみるねんで。じいちゃんとの約束やで」というものでした。

ただの食べ物の話のようですが、私はその言葉を、未知のものに出会ったときには、避けるのではなく、まず自分で試してみるという人生の教えとして受け止めています。以来、「どこへでも行き、何でも見て、いろいろなことをやってみる」という姿勢を、自分の座右の銘、行動規範にしてきました。

机上の知識やネット情報だけで判断しないことを大切にしています。関心のある場所には面倒がらず足を運び、会うべき人には実際に会いに行く。自分の目で見て、自分の身体で感じ、自分の頭で考えて判断します。

インタビュアー
教育者として心がけておられることはありますか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

学生に挑戦を促す以上、教員である自分自身が、新しいことに即、挑み続ける姿勢を見せるように心がけています。新しいものに出会ったときには、いわゆる、イノベーターやアーリーアダプターとして、誰よりも先に試してみる姿勢です。

祖父にはほかにも少し変わった家訓がありました。「人と違うことをしようとしている人とは、さらに違うことをする」「ケーキは箱の上に乗せて写真を撮る」「テレビの上にテレビを載せて、同時に違う番組を見る」「無理そうでもさらに三十秒我慢してみる」「行動するときには擬音をつける」などです。言葉だけ聞くと変ですが、見せ方を工夫すること、常識外のことをすること、状況を面白がることを教えてくれる家訓です。

インタビュアー
「和の精神と企業家群像」では、江戸時代から現代までの経営者をテーマにされていますが、その中で現代の若者のキャリアにも通じる学びがあれば教えてください。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

時代や業種は異なっても、優れた起業家には共通する姿勢があります。それは、「まず行動する」ということです。

私がよく学生に紹介するのが、本田宗一郎氏の2つの言葉です。「人は、見たり、聞いたり、試したり、で判断するが、一番大切なのは、試したり、だ。」「失敗することを恐れるより、何もしないことを恐れろ」です。

同じような言葉をウォルト・ディズニーも述べています。「成功する秘訣は何か、どうすれば夢を実現することができるかとよく聞かれる。それは自分でやってみることだよ。」「私はじっとしていることができない。常に探索、実験していかねばだめなのだ。」

現代は、インターネットやAIによって、世界中の情報を簡単に手に入れられる時代ですが、情報を知っていることと、実際に経験することは全く違いますし、それが正しいかもわかりません。私は学生たちに、「ネットで調べて終わりにしない。自分の目で見て、自分で確かめ、一歩踏み出してみよう」と伝えています。

今すぐ動き始めることで新しい出会いが生まれ、次のチャンスへとつながります。人生もキャリアも、結局は「行動した人」にしか微笑みかけません。

キャリア形成と職業選択

インタビュアー
これまでのキャリアの中で、「失敗」や「遠回り」と感じた経験はありますか。振り返ってみて、その経験にはどのような意味がありましたか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

私の人生は失敗や遠回りの連続だったように思います。しかし、その遠回りや失敗こそが楽しい、意味のあるプロセスでもありました

小学生の頃は、テレビで放送される秘境や自然を巡る番組に夢中になり、「いつか世界中を旅してみたい」と憧れていました。これが、あまやん1.0。

そこで、高校時代には北米のニューメキシコ州へ留学し、激辛唐辛子のおいしさも覚えて帰ってきました。大学では海外の学生との交流やバックパッカー旅行に熱中し、将来は世界を飛び回る国際ビジネスマンになりたいと漠然と考えていました。これが1.5の段階。

しかし、大学卒業後に就職したのは、なぜか地域の経済団体でした。ここからが2.0。

国際交流事業や地域プロジェクト、学研都市での産学連携や新産業の創出、ベンチャー企業支援など、当初思い描いていた希望とは異なる仕事に携わることになりましたが、毎日、毎年、違う仕事の連続で、とても楽しく経験と学びも大きかったです。しかし、非営利団体でできることへの限界を感じ、副業としての起業に挑戦しました。

インタビュアー
副業としての起業ではどのような事業をされたのですか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

当時、ようやく自由に渡航できるようになったベトナムで雑貨を買い付け、日本ではまだ普及し始めたばかりだったインターネット通販を活用して輸入販売を始めました。サイト構築も試行錯誤で学びつつ、膨大な時間と労力を費やしたにもかかわらず、事業は思うような成果を上げることができず、数年で撤退することになりました。ここまでが2.5。

この経験は、「なぜビジネスは失敗するのか」を本気で学びたいと思うきっかけになりました。そこで、大学院のアントレプレナー専攻に進学し、MBAを取得するとともに、創業支援や起業支援、起業家精神について専門的に学びました。ここが2.8。

その後は、起業コンサルタントやインキュベーションマネジャーとして、多くの起業家や研究者と出会い、現在の大学教員としての教育・研究活動へとつながっていきました。ここからが3.0。

インタビュアー
3.0についてもお聞かせいただけますか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

高校時代の留学経験を生かし、ニューメキシコ産の唐辛子を日本に初めて導入して地域ブランド化を目指すプロジェクトに挑戦しました。残念ながら継続はできませんでしたが、地域振興や商品開発を実践していく経験と財産になりました。

さらに、ベトナムへの十数回に及ぶ渡航経験は、現在取り組んでいる海外起業家育成プログラムや、海外で活躍する日本人起業家の研究へとつながっています。起業支援施設・デラドームも建設しました。ここまでで3.7ぐらいです。

人生を振り返ると、その時々では失敗だと思っていたことや、無駄だと思っていた経験が、後になって一本の線でつながり、面になっていることに気づきます。スティーブ・ジョブズは「点と点は、あとから振り返ってつながることがわかる」と語っていますが、まさにその通りだと思います。

私は学生に、「失敗を恐れなくていい。むしろ挑戦しないことの方が人生の失敗になる」と伝えています。遠回りをした人ほど、無駄に見える経験が多くなるものです。

私自身も、これから先どのような道を歩むのかは自分でも分かりません。ケセラセラ。しかし、面白そうなことを見つけて挑戦し続ける限り、人生はまだまだ変わっていくと信じています。

現在は、途上国の起業家活動の研究や、地域の若者起業家の支援を行っていますが、何かにつながるかもしれないし、繋がらないかもしれない「点」をつくり続け、ただの大学教員で終わらず、次のステージ、4.0に行けたらよい、そして最後は5.0で死にたいと思っています。

インタビュアー
時代とともに「価値あるもの」は変化していると思います。これからの時代に価値を生み出すために、若い世代は何を意識すべきでしょうか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

最も大切なのは、自分自身を常にアップデートし続けることです。情報、技術、必要な能力は、これまで以上のスピードで変化しています。

私は学生たちに、「自分自身にもバージョン番号を付けよう」と話しています。自分2.0、自分2.5、自分3.0というように、常に新しい知識や経験を取り入れ、自分を更新し続けます。それは、メジャーアップデートなのか、マイナーアップデートなのか。自分のどこが成長し、何が変わったのかを意識してほしいと思っています。

実は私自身も、ここ1年で「あまやん3.7」から「あまやん3.8」へ、数年後には「あまやん4.0」へのアップデートを計画しています。飛躍的な進化、変化を遂げますので期待してくださいね。

インタビュアー
若い世代が意識しておく大切なことは他にもありますか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

実行してほしいのが、「お金の置き場」です。

「資源、資産をどこに配分するか」は重要な意思決定です。それは、企業だけでなく、個人にも当てはまります。

私は学生たちに、「正しいお金の置き場」を学び、少額からでも長期・積立・分散を基本とした投資、資産形成を始めることを勧めています。時間を味方につけ、アインシュタインの複利の力を活用すれば、20年後、30年後にはお金に困ることはないでしょう。

先ほどの私の祖父が亡くなった際、タンスから大量の兌換券や一円札、戦時国債などが見つかりました。当時は大変価値のあったものですが、ハイパーインフレによって、現在では額面1円の資産価値しかありません。もし、同じお金を不動産やゴールドなどの現物、あるいは適切な企業への長期投資に振り向けていれば、数十倍に資産価値が増えていたはずです。

そして、私が最も伝えたいこと ーそれは、お金を増やすこと自体は人生の目的ではないということです。経済的な基盤ができることで、お金のためだけに働く人生から、自分が本当にやりたい仕事や、社会に価値を生み出す挑戦へと踏み出す自由が生まれます。

これからの時代に価値を生み出せる人とは、変化を恐れず、自分自身のバージョンをアップデートし続ける人です。そして、自分の時間、お金、知識、人とのつながりを、未来に向けて最も価値ある場所へ投資し続けられる人だと思います。私はそれこそが、大学の経営学では教えない「人生の経営」だと考えています。

先生からのメッセージ

天野了一先生_四天王寺大学event

インタビュアー
AIが進化する時代に大切なことは何ですか。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生

ここ数年で飛躍的な進化を遂げた生成AIは、産業革命、インターネット革命にも匹敵する、人類の働き方や学び方を大きく変える技術、文明の転換点だと考えています。考えること、知的作業の多くが人間から離れることになります。

仕事や学習、創作活動など、日常的にAIを活用し使いこなす人がいる一方で、「まだ使ったことがない」「よく分からない」と言う人も少なくありません。これからの社会では、その差がそのまま仕事の生産性や、ひいては収入の差にもつながっていくでしょう。

私は学生たちに「まず使ってみよう」と伝えています。完璧に理解してから始める必要などありません。AIは、自分の能力を何倍にも広げてくれる最強のパートナーとなり得ます。大学では賛否両論ありますが、好奇心を持って自由に使いこなしてほしいと思います。

一方で、AIにできないこともあります。何に疑問や問題意識を持つのか、どんな課題を発見するのか、AIへどのような問いを投げかけるのか。

そして、AIが出した答えを鵜呑みにせず、疑いながら、自分の知識や経験を基に判断し、責任を持って意思決定すること。人と信頼関係を築き、現場で汗を流したり、ものづくりや子育て、地域づくりなどは、これからも人間の大切な役割であり続けるでしょう。

インタビュアー
最後に学生やキャリア形成初期の若手に向けたメッセージをお願いします。
天野了一先生_四天王寺大学
天野先生
人生を変えるのは、AIやネット情報ではありません。行動のみです。

私が学生時代から大切にしている信条である、「どこへでも行き、何でも見て、いろいろなことをやってみる。」AIの時代になっても、この原則は決して変わりません。おもしろそうなことを見つけ、自分で考え、挑戦する。その積み重ねが、あなたにしか創れない人生とキャリアを形づくっていきます。

世界を舞台に、常識のたがを外し、雑音に惑わされず、自分の信じた、自分らしいワクワクする挑戦と行動を続けてください。
皆さんの未来には、まだ誰も見たことのない可能性が広がっています。次世代のみなさんの大活躍に期待し、応援します!

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。自分をアップデートしていくことを意識し、失敗を恐れずに挑戦しようと思いました。

四天王寺大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、四天王寺大学で教授を務められている天野了一先生です。

名称 四天王寺大学
所在地 〒583-8501 大阪府羽曳野市学園前三丁目2番1号
大学HP https://www.shitennoji.ac.jp/