
転職エージェントは、求職者の転職活動に関して様々なサポートを行ってくれるサービスです。転職エージェントに登録し、エージェント経由で紹介された企業との面接のあと、順調に進めば応募した企業からの内定がもらえます。
ところが、第一希望の企業からも内定がもらえたり、内定した企業に違和感があったり、といった理由から内定を辞退したいと考える人もいるはずです。「転職エージェント経由で内定をもらった企業に対して内定辞退はできる?」また、「内定辞退はどのようにすればいい?」と不安を抱えていませんか?
この記事では、転職エージェント経由での内定辞退の方法を、正しい伝え方や注意点とともに紹介しています。内定辞退によるトラブルを回避するために、ぜひ最後までご覧ください。
【結論】転職エージェント経由での内定は辞退できる!
まず最初に結論として、転職エージェント経由で内定を受けた企業であっても、内定辞退することは可能です。その場合は、「内定辞退をしたい」ということを転職エージェントに、できるだけ早い段階で知らせます。
このときに、相手企業への直接連絡をして伝えるのではなく、転職エージェントに申し出ましょう。
内定辞退をするとトラブルにつながるのでは?と不安を感じる人もいるかもしれませんが、内定辞退は法律でも認められています。民法627条1項に定める「労働契約の解約権の行使」に当たるため、入社日の14日以上前に告知をすれば理由のいかんに問わずに自由に解約可能です。もしも、2週間前を過ぎていた場合は、企業が入社に合わせて準備していた制服や備品などの損害賠償を求められる可能性もあるので注意しましょう。
転職エージェントへ内定辞退を伝える方法
内定辞退をする際に最も重要なことは、どのように転職エージェントに伝えるかです。電話で伝えた後、メールで丁寧にお詫びをするようにしましょう。誠実な印象を与えることが重要です。
ここでは、内定辞退を転職エージェントに伝える方法として、電話とメールの一例を紹介します。例を参考にして丁寧に伝えましょう。

電話
内定辞退の意思決定をしたら、まずは転職エージェントに連絡しましょう。面談や手紙などの方法もありますが、電話とメールが早く伝えられて便利です。
採用を決めた企業側は受け入れ準備に取り掛かっているということを考慮し、まずは早めに電話で第一報を入れます。電話では、確実に伝えるポイントを抑えておけば問題ありません。
内定を辞退する意思
辞退する会社の社名
内定辞退の理由
内定辞退の処理のお願い
次に例文を示します。転職活動を通してエージェントと話すことには慣れているかもしれませんが、丁寧に伝えるように意識しましょう。
〇〇と申します。
ただいま、お時間よろしいでしょうか?
はい、貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。
先日は〇〇社様の最終面接を受けさせていただき、その結果、内定をいただきました。
取締役の〇〇様にも同席していただき、会社の詳しい話も拝聴することができました。
大変感謝しております。
また、エージェントの〇〇様からも、丁寧なサポートを受けることができ、ありがたく思っております。
本日お電話を差し上げましたのは、他でもありません、その〇〇社様の内定に関してです。
たいそう心苦しいのですが、内定を辞退しようと考えております。
先方が気にそまないとか、そのような理由ではございません。
お断りする理由は、配属される事務所までの通勤時間が長くなるためです。
欠員補充ということでしたので、変更は不可ということでした。
一旦はしょうがないと考えましたが、毎日のことですので、やはり、わたしには難しいと判断しました。
せっかく内定までいただきましたので〇〇社様に出向きまして、ご辞退を申し上げるのが筋かと思います。
ですが、まずはお世話になっております転職エージェントの〇〇様にご連絡を入れてからと思いまして電話を差し上げた次第です。
内定辞退のご挨拶に、〇〇社様に行ったほうがよろしいでしょうか?
エージェントの〇〇様から、連絡をしていただけるのですね。
ありがとうございます。
先方にはくれぐれもよろしくお伝え下さい。
お手数をおかけいたしまして、恐縮しております。
何卒よろしくお願い申し上げます。
電話で話すのはこの程度で構いません。あとは転職エージェントに任せましょう。
メール
続いてメールでの連絡です。メールを出しておいたほうが良いのは、メールは日付が必ず残るからです。内定辞退は連絡をして14日後に、確実に成立します。
つまり、いつ連絡したかがあとから問題になる可能性があるのです。ですから、メールでも一報入れましょう。
メールも注意点は電話の場合と同じです。
本文:
〇〇エージェント株式会社 〇〇様
いつも大変お世話になっております。
転職活動のサポートを受けております〇〇です。
先日は突然のお電話、失礼いたしました。
その際にお話申し上げましたように、〇〇社様の内定を辞退する旨を正式にお伝えいたしたくメールを差し上げました。
今回、最終面接の結果、内定を出していただきました。
私を評価していただき、感謝しております。
しかし、誠に心苦しいのですが熟慮した結果、今回は内定を辞退させていただきたく連絡いたしました。
内定辞退の理由としましては、通勤時間の長さとご承知ください。
一旦は頑張れるかとも思いましたが、もしできなかった場合に〇〇社様にご迷惑をおかけすることになります。
そのため残念ではございますが、今回は辞退することを決心しました。
せっかく内定をいただきましたが、ご迷惑をおかけすることを心よりお詫び申し上げます。
本当に申し訳ございません。
今後のことは改めて考えようと思いますが、取り急ぎ連絡いたしました。
以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
転職理由をきちんと述べて、誠意を持ってメールの文章を作成しましょう。転職理由を詳しく書くことが、次回からの転職エージェントの案件紹介の参考になるでしょう。あなたの価値観を知らせることになるからです。
内定辞退を伝える時に最も大切なのは、辞退する会社への感謝の気持を忘れないことです。そして申し訳ないと言う気持ちを、心を込めて伝えましょう。もちろん転職エージェントに対しても感謝とお詫びの気持ちを伝えましょう。
そうすることによって、次回はあなたの希望にマッチングする会社の紹介があるかもしれません。
転職エージェントから内定辞退を止められた際の対処法
内定辞退を伝えると、転職エージェントによっては引き止めようとすることもあります。内定辞退を止められた際の対処法を解説します。

再度はっきりと内定辞退を伝える
転職エージェントは、紹介した企業から内定が出ることで紹介料として報酬がもらえます。そのため、内定辞退を申し出たときには引き止められるかもしれません。しかし経験の豊富なエージェントであれば、内定後にある程度の割合で辞退者が出ることは覚悟しています。
あなたの強い意志をしっかりと伝えれば、内定辞退をすぐ理解してくれるでしょう。内定辞退の理由を再度しっかり説明し、それでも引き止められた場合は運営会社に連絡をして担当者の変更をお願いしましょう。
内定辞退を伝えるときにははっきりと理由を伝えることがポイントです。内定辞退でよくある理由を紹介しておきます。
会社に違和感を感じた
現在の仕事にとどまる
通勤時間が長い
残業が多そう
他の会社から内定が取れた
いずれも、内定辞退をするのに十分な理由です。転職エージェントに理由を伝えるときの参考にしましょう。
担当者を変更してもらう
転職エージェントにも、内定を出した会社にも内定辞退を止める権利はありません。それでもしつこく内定辞退を取り消すように勧めてくる担当者だと、困ってしまいます。
あまりしつこいようだと、転職エージェントの運営側に連絡して担当者を代えてもらいましょう。転職エージェントの本社につながる連絡先が、公式サイトなどに掲載されています。
転職エージェントによっては、担当者に関する苦情を伝えるためのホットラインを開設している所もあります。求職者側の立場に立たず、企業側の都合を押し付けてくる担当者は早めに代わってもらったほうがいいでしょう。
内定保留を検討する
転職活動では、何社か並行して選考が進む場合があります。このことが原因で内定辞退をする必要性が出てくるのですが、内定保留を検討することも可能です。
内定保留は、応募した他の会社からの採用通知を待っている場合などに有効な手段です。A社とB社に応募して、A社の内定をもらったが、B社からは未連絡の場合ですね。第一候補がB社であれば、A社に対して内定承諾までの期間を延ばしてもらい保留としてもらいます。採用通知を待っている会社が、同じ転職エージェントの紹介であれば、なおのこと内定保留を利用するのがおすすめです。
ただし、内定保留は1週間程度が目安となっており、期間が長くなると内定取り消しになるリスクもあります。いずれにしても、内定辞退や保留が避けられるように、事前に気をつけることが大切です。
また、内定辞退の前に内定保留という選択肢があることも覚えておいてください。
内定辞退で転職エージェントとのトラブルを避ける方法
転職エージェントを介して、転職活動をする際も何が起こるかわかりません。内定をもらったあとに「現職にとどまる」「条件が合わないところがあった」などの理由で内定辞退をすることになることもあるでしょう。
転職エージェントを利用する際には、「内定辞退」もありうることを念頭においておくといいかもしれません。
内定辞退で転職エージェントとのトラブルを避ける方法を紹介します。

応募する前に企業情報を調べておく
応募した企業の面接で実情を知り、なんとなく違和感を感じた場合、内定辞退に繋がる原因となることがあります。内定辞退を避ける方法は、応募する前に企業情報を詳しく調べておくことです。
転職エージェントからの紹介では、その会社の良い点ばかりが挙げられがちですが、自分の希望にそぐわない点もあるかもしれません。
応募する前にそれらの情報を知っておけばトラブルは避けられます。転職エージェントから会社を紹介してもらったら、自分でも企業研究をしましょう。
会社のホームページや、会社に関する口コミなどを調べてみます。すると疑問点などがでてきますので、転職エージェントに質問してみてください。
そして、自分が希望している条件と違う、合わない、と感じたら応募しないようにしましょう。転職活動でのトラブルを避けられます。
転職エージェントに希望条件を明確に伝えておく
転職エージェントがあなたの希望と異なる企業を紹介するのは、あなたのことをよく理解していないからかもしれません。転職エージェントに登録すると担当者と面談を行います。その面談で自分の希望条件を明確に伝えておきましょう。
希望を明確に伝えることで希望条件に合わない会社の紹介は減っていきます。ただ初回面談は緊張して、あるいは時間の都合で希望条件を全て伝えられないかもしれません。その場合は転職エージェントへの進捗報告や相談を通して、希望条件を伝えていきましょう。
希望条件を伝えずに転職活動を進めてしまうと、なかなか応募したいと思える企業がみつからなかったり、内定したものの違和感があって辞退をすることになる可能性があります。希望条件を伝えるにあたっては、妥協は禁物です。希望条件が思いつかないのであれば、転職エージェントにも一緒に考えてもらうといいでしょう。
転職活動の進捗をエージェントと共有しておく
ステップ | 転職活動の進め方 |
---|---|
ステップ1 | 転職エージェントへの登録 |
ステップ2 | 転職エージェントからの企業紹介 |
ステップ3 | 企業研究 |
ステップ4 | 必要書類の提出(履歴書、職務経歴書) |
ステップ5 | 企業面接 |
ステップ6 | 内定獲得(合否連絡) |
ステップ7 | 内定承認 |
ステップ8 | 入社契約 |
ステップ9 | 入社 |
転職活動での主なステップを上の表に挙げてみました。このステップを参考にして、応募した企業の進捗状況を把握しておくことが必要です。
「現在どのステップにあるのか?」を把握し、進捗管理をエージェントと共有しておくと、後々のトラブルを回避しやすくなります。
事前に内定辞退の可能性などをエージェントも予想しやすくなり、内定保留の提案や新しい紹介などの手続きをスムーズに行いやすくなります。
内定承諾の期限を延ばしてもらう
応募した企業から内定の連絡があった場合に、「いつまでに承諾してほしい」というリクエストがあります。この段階で承諾ができずに日が経過してしまうと、内定を取り消される可能性があります。
何かしらの理由があって承諾ができないときには、期限を延ばしてもらうことによって、トラブルを避けられる可能性があります。これを内定保留と言います。
他に応募した会社があって、その会社の合否を見てから内定承諾をしたい場合に有効です。その際、転職エージェントには正直に「他の会社の合否待ち」と伝え、内定保留について相談しましょう。
転職エージェント経由で内定辞退する際の注意点
転職エージェント経由で内定を辞退する際に最も重要な点をあらためて説明します。
内定辞退の意思決定をしたら、なるべく早く伝えることです。早く伝えることで、会社側も代わりの人の求人募集をかけたり、入社の準備をストップしたりできるので、内定辞退のトラブルが回避しやすくなります。

内定辞退をすることは、多かれ少なかれ相手の会社と転職エージェントに迷惑をかける事になります。連絡をする際には、感謝とお詫びの気持ちをしっかりと伝えるようにします。
そうすることで、特に転職エージェントとの関係を良好に保つことができるでしょう。転職活動は終わりませんので、次の会社紹介につながるようにします。
転職エージェント経由での内定辞退に関するよくある質問
転職エージェント経由での内定辞退に関するよくある質問を調べてみました。参考にしてみて下さい。

転職エージェントが内定を辞退させてくれない場合どうすればいいですか?
内定辞退は、連絡して14日後には相手の了承がなくても成立します。ですから日付の残るメールなどで連絡をするようにしましょう。
転職エージェントには内定辞退を拒否する権利はありません。どうしても内定辞退を認めてくれない担当者であれば、転職エージェントの運営会社に連絡して対応をお願いします。
それでも、なかなか対応してくれないと感じる場合には、その転職エージェントは辞めて他の転職エージェントを使って転職活動を進めたほうがいいでしょう。
転職エージェントを途中で辞めたいのですが、ペナルティはありますか?
登録している転職エージェントを途中で辞めるのは自由ですし、もちろんペナルティや違約金もありません。多くの転職エージェントは無料で利用して無料で退会できます。
しかし、面接の日程や内定が決まったあと、何も言わずに退会をするといったことは避けましょう。エージェントや会社側に迷惑がかかります。再登録をする可能性も考えて退会の手続きを行いましょう。
転職エージェントが合わないから辞めたいのですが、どうしたらいいですか?
転職エージェントはいつでも辞めることができます。しかし、辞めるのに適さないタイミングがあるので注意が必要です。
まず、求人を探してもらっているときは、辞めるのに適していません。エージェントがあなたのために時間を割いて求人を探しています。どのような案件が紹介されるかを確認してみましょう。
紹介された案件が、自分が出した条件をクリアしないものばかりだったら、転職エージェントに事情を説明して、サポートを辞退することができます。
希望する条件をクリアする会社に応募をしたあとも、辞めるタイミングとしてはふさわしくありません。会社に書類を提出し、面接をする時期です。この時期に退会すると、転職エージェントにも相手の会社にも迷惑がかかります。
それでも転職エージェントに不満があるときは、他のエージェントへの登録を検討してみましょう。転職エージェントはいくつ登録しても問題ないので、気の合うエージェントに巡り会えるかもしれません。
内定を断ったら違法ですか?
内定を断っても違法ではありません。内定辞退に関しては、法律(民法627条1項)によって内定を断る権利を認められています。辞退する意思を相手に伝えてから14日経てば辞退が成立します。
しかしながら、会社側はあなたが入社する準備をしていることも考慮して、早めに断るなどの誠実な対応をするようにしましょう。
転職エージェント経由での内定辞退についてまとめ
転職エージェント経由で内定した場合であっても辞退することは可能です。
仮に内定辞退をしたとしても、会社側が入社に向けて、多くの費用をかけている場合を除き、損害賠償などはほとんどありません。ただし入社日の直前になって内定辞退をすることは避けたほうが無難です。
内定辞退を決めたらできるだけ早くエージェントに伝えましょう。早く伝えることによって、転職エージェントや会社にかかる迷惑を最小限にすることができます。
内定辞退は転職活動で誰にでも起こり得ます。大切なことは、大きなトラブルにならないように、事前に転職エージェントに相談するなど、誠実な対応を心がけることです。
この記事でお伝えしたことを参考にしながら、トラブルがないように転職活動を進めていきましょう。