高田短期大学の伊東秀幸先生にインタビューさせていただきました!

高田短期大学

今回は高田短期大学で講師を務める伊東秀幸先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。公共経営、組織行動などを研究されている伊東先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。

現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について

banpaku

インタビュアー
改めて、今回のインタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、現在のご研究内容や教育活動について、とくに力を入れていらっしゃる分野をお伺いできますでしょうか?

伊東先生

元々、経済学部の出身でマクロ経済学のゼミに所属していました。当時、マクロ経済学を勉強する中で、様々な政策が政府や日本銀行の思惑どおりに進んでいないことを知り、社会経済活動の主導権が市場、特に国民に移っていると考え始めました。いま振り返ると、学部の指導教授はミクロ経済学も重視されていて、市場の重要性を暗示されていたことがわかります。そこから、情報の経済学に関心を持ち、納税者の思惑が明示される租税回避行為や地域住民の思惑が明示される市民活動に研究を拡張して、現在は「観光地経営」を中心とした教育研究活動に従事しています。また、短期大学の教員として働く傍ら、大学院の博士後期課程に在籍し、「観光地経営」に関する学術的貢献を目指しています

私がゼミの指導で重視していることは、「複眼的視点」です。言い換えると、意思決定の教育でしょうか。意思決定に自身で責任を負えば、可能な限り情報を集めるでしょう。

その手掛かりとして、2025年度はゼミ合宿で大阪・関西万博を視察しました。誰かの思惑で開幕前から繰り広げられていたネガティブキャンペーンですが、9月8日の視察当日は入場ゲートから大混雑が続き、又聞きした情報は実態と大きく乖離していることに気付けたようです。

ちなみに、私は万博に魅了されて9回も訪れました。

インタビュアー
「観光ビジネス」や「公共経営」の学びは、将来どのような仕事や生き方に役立ちますか?
伊東秀幸先生
伊東先生

「観光ビジネス」や「公共経営」に共通する特性は、経営主体と多様なステークホルダー間で利害調整が求められるところです。経済学者のシュンペーターは、著書『経済分析の歴史』の中で「経済学は相互に共通でない利害や能力を持っている多数の乗客を乗せているパスのようなものである」と記述していますが、まさに「観光ビジネス」や「公共経営」の実態を表す言葉です。

また、私がこよなく愛する漫画『カイジ』に、「質問すれば答えが返ってるのが当たり前か?なぜそんなふうに考える?」「その真偽はどうする?真偽などどうでもいいから聞きたいと言うのか?」というフレーズがあります。これは、双方の利害が一致しない限り、正確な情報を与えるインセンティブが働きにくいことを示唆しています。

この学びは、職場の人間関係を形成するときに役立ちます。こちらのイラストをご覧ください。

イラスト

これは、職場でスクリーニング(選別)する側がスクリーニングされる(はずの)側にスクリーニングされている構図を表しています。このイラストを生成AIから作成したように、誰もが情報の「ギバー」(与える人)として活躍しやすい社会に変わりました。

しかし、いつでも誰にでも正確な情報を与えることはあり得ません。もし、上司の行動が交渉の姿勢や場を示しているに過ぎないことを部下に見抜かれれば、正確な情報を手に入れられないでしょう。

キャリアの意思決定のプロセス

インタビュアー
学生が“自分に合った進路”を見つけやすくするコツがあれば教えてください。
伊東秀幸先生
伊東先生

就職活動の時期を迎えると、”Will”(やりたいこと)、”Can”(やれること)、”Must”(やるべきこと)のフレームワークが様々な場所に登場します。私は、真っ先に”Can”を突き詰めて欲しいと考えます。

色々な考え方が存在することを前提にお伝えしますが、”Can”よりも低いハードはないと考えます。ただ、その”Can”が何か、正確な情報を手に入れなければなりません。

したがって、相談する相手が正確な情報の「ギバー」か否か、を見分ける判断力が問われます。先ほども申し上げたとおり、双方の利害が一致しない限り、正確な情報を与えるインセンティブは働きにくいです。

念押しですが、相談のインセンティブが誰にあるか、を十分に考えてください。単に親しい友人へ気軽に相談する行為は、相談する側が有限のリソース(時間や労力等)を節約し得るコンビニエンス(便利・好都合)な存在を選択したに過ぎず、あくまでも相談する側にインセンティブがあります。

後に詳しく説明しますが、相談される側のインセンティブを見出し、双方の利害を一致させることが求められます。

インタビュアー
納得度の高い進路選択をしている学生には、どのような行動習慣や思考の特徴が見られるとお考えですか?
伊東秀幸先生
伊東先生

現在、就職戦線は売り手市場と称されていますが、自身の人生に託された有限のリソースを投じて「座席」を手に入れ、今後も維持していくことを鑑みれば、学生は厳しい視線を向ける「買い手」として行動しているとも考えられます。そして、座席を運用することで生み出される賃金は、いわば配当金と読み解くこともでき、その配当金を自身に再投資して職能を高められれば、現在の座席を下取りに出して、より好条件の座席を買い直すことができます。

つまり、納得度が高い進路選択が実現する学生は、「テイカー」(受け取る人)でなく、「マッチャー」(バランスを取る人)として行動します。まるで、分譲マンションの住み替えですが、あながち間違っていない判断です。

そのような思考がある学生は、この文脈で意味する「売り手」(採用担当者)が劣悪な座席を優良な座席と称して売り出していれば、それを冷静な判断で見抜き、速やかに「売り場」(採用フロー)から撤退すると考えます。もはや、買い手は「求職者」でなく、「選職者」に変容を遂げています。

したがって、売り手は好条件のみならず、悪条件を含めた正確な情報を常に発信し続け、買い手から信用を得ることが当然に求められます。もちろん、自身の立ち位置を見誤ってしまい、買える座席をいつまでも提示されない一定数の買い手が存在することにも留意しなければなりません。

職業選択・企業選びに関する質問

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インタビュアー
観光業界やサービス業を目指す学生が、学生のうちから意識しておくと良いポイントは何ですか?
伊東秀幸先生
伊東先生

インターネットが十分に普及していなかった頃は、企業内の勤務年数や地域内の居住年数が正確な情報を知り得る手立てとして有効に機能していたかも知れません。確かに、過去の成功体験から物事を再生産しても耐え得るぐらい、現代に比べて外部環境の変化が結果に支障をきたしませんでした。

しかし、現代の外部環境はどうでしょうか。日本中にインバウンドが溢れ、オーバーツーリズムが問題視されるくらい、外部環境は大きく変化しています。

また、インターネットが十分に普及した現代は、正確な情報を得ることに勤務年数や居住年数が連動しにくくなり、誰もが「複眼的視点」で物事の核心に迫れます。もはや、一昔前のように新参者を見下していた人は、この組織を離れたら通用しない人と逆に見下される危機的状況に陥りやすく、構成員の内面を含めた内部環境も大きく変化しています。

したがって、トレンドの転換が激しい観光ホスピタリティ産業に従事する学生は、自身の観念を常にアップデートする姿勢が求められます。円安に伴う物価高で厳しい状況にありますが、外国へ出向いて「見る側」と「見られる側」を入れ替えてみてください。

社会全体を俯瞰して見ると、目の前にある現実の異質性に気が付けるはずです。その経験は、顧客のニーズを的確に捉える能力として大いに活かされるでしょう。

インタビュアー
今後10年で、社会で求められる力や仕事のスタイルはどのように変わっていくと思われますか?
伊東秀幸先生
伊東先生

現時点でも進んでいますが、今後、肩書と職能の不一致が一層に可視化されていくと考えます。例えば、職場の上司が「俺のことをどう思う?怒らないから正直に言ってみな?」と部下に問うたとします。

果たして、どれくらいの部下が正直に答えるでしょうか。日頃から不適切な言動が目立つ上司と仮定すれば、「部下の意見を取り込もうとする素敵な上司でありたい」「上司として権威を振りかざせば正直に答えないはずがない」という期待も上司の内面に存在するでしょう。

しかし、先ほどのイラストが表しているとおり、部下の内面にいるもう一人の部下が上司の期待を全てを見抜いていれば、部下は自身に降り掛かる災難を予想して、上司が喜ぶ優等生の回答を選択するかも知れません。やや穿った見方ですが、部下は不適切な言動にあえて異を唱えず、気に入らない上司の言動が周囲に可視化されることを虎視眈々と狙っている可能性もあります。

それくらい、正確な情報を黙っておくことは経営に大きな影響を与え、権威を失墜させる破壊力があります。それ故に、肩書に溺れてしまうと、職能の不一致が自ずと可視化されていきます。

その点、『水戸黄門』や『遠山の金さん』は考え抜かれた作品です。

転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス

インタビュアー
進路や仕事選びに悩んでいる学生に伝えたいメッセージがあればお願いします。
伊東秀幸先生
伊東先生

お気付きかも知れませんが、今回の談話で重要な部分は、「如何にして正確な情報を手に入れるか」です。正確な情報を別の表現で申し上げると、「利害関係から生じる遠慮を取り除いた意見」です。

採用から間もない従業員やよそから移り住んだ住民は、企業や地域に内在する問題に対して正解を掴んでいる可能性が十分にあります。しかし、それが明示されない、いや明示することができないところに大きな問題を抱えています。

昨今、上場企業の「ガバナンス」が問われている中で、株式の持ち合いが解消され始めています。例えば、夫の財布を妻が握り、妻の財布を夫が握っていれば、機嫌を損ねないように遠慮が生じて、互いの改善すべき点を指摘し合えなくなりますよね?そこに、株式の持ち合いを解消する理由があります。

ただ、これも利害の一致から導かれる結果です。言い換えると、あなたの就職が決まることで利害が一致する人に意見を求めれば、遠慮なく意見を伝えてくれるでしょう。

例えば、キャリア支援やゼミで関わる教職員が挙げられます。もちろん、ご家族は最上級の当事者意識をお持ちでしょう。

また、最近は就職エージェントの活躍も目立ちます。反面、望ましい結果へ向かって伴走することは、苦楽をともに乗り越えなければならず、相手も必死の状況です。

その過程で、心を鬼にして厳しい意見を伝えなければならない場面もありますが、それは建前で伝えられる優しい意見よりも何十倍、何百倍の価値を持っている正確な情報です。ただ、それを受け入れる覚悟が問われます

受け入れられるか否かは、場当たり的な人間関係でなく、日頃から人間関係を形成しているか否か、つまり信頼が大きく作用するかも知れませんね。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。転職には不安や迷いはつきものですが、情報を取捨しながらキャリア形成をしたいと思いました。

高田短期大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、高田短期大学で講師を務められている伊東秀幸先生です。

名称 高田短期大学
所在地 〒514-0115 三重県津市一身田豊野 195番地
大学HP https://www.takada-jc.ac.jp/