大妻女子大学の井上俊也教授にインタビューさせていただきました!

大妻女子大学

今回は大妻女子大学で教授を務める井上俊也先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。経営学を研究されている井上先生にキャリアの転機における考え方についてお伺いします。

現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について

インタビュアー
改めて、今回のインタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、現在力を入れていらっしゃる研究や教育活動について教えてください。

井上教授
井上先生

キャリア教育センターの専任教員として正課外のキャリア教育プログラムである「大妻マネジメントアカデミー(OMA)」の企画・運営を行なっています。大妻女子大学では、他大学同様に正課のキャリア教育科目もありますが、このOMAは正課外の講座として2011年に始まりました。

インタビュアー
キャリア教育センターでの取り組みを通じて、学生にどのような成長や変化を促したいと考えていますか?
井上先生

OMAでは、ビジネスやマネジメントを教えており、各学部・学科で学んだ専門的な知識に、マネジメントのスキルを兼ね備えた人材の育成を目指しています。正課外ですので、単位にはならず、開講時間帯は平日の夜や土日が中心です。

それでも学生たちは熱心に受講しています。

インタビュアー
大学内外の連携(産学連携・地域連携)では、どのような試みを進めていらっしゃいますか?

井上教授
井上先生

このOMAは、各企業からのご支援やご理解をいただいており、ビジネスで活躍する外部講師が多数在籍しています。キャンパスで学んだ専門的な知識や、OMAで学んだマネジメントの知識をベースにして、学生が主体的にビジネスや社会の課題解決を行っていく点は、他大学にはないOMAの強みです。受講する学生にとっては、他大学では経験できない実践的なキャリアプログラムとして評価を得ています。

研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

インタビュアー
現在のキャリアに至るまで、どのような経緯や重要な転機がありましたか?
井上教授
井上先生

私は、電電公社(現在のNTT)に入社し、主に企画・営業・国際の分野でキャリアを26年重ね、それが現在の自分の基礎となっています。

NTTには夏季特別休暇制度があり、この期間中に海外での学会発表を経験しました。また、当時から兼業が認められる制度があり、非常勤講師を務めました。大学教員になるための研究歴・教育歴を重ねることができたのは会社のおかげであると感謝しています。

インタビュアー
これまでの実務や海外でのご経験が、現在の教育・研究にどのように生かされていますか?
井上教授
井上先生

NTTではフランスのビジネススクールに留学する機会をいただきました。フランスでは、当時の私にとっては衝撃的な経験がありました。欧米はどこでも同じかと思いますが、「学校で学んだこと」が社会で評価されることです。したがって学ぶ方も教える方も真剣です。

それに比べると日本は「何を学んだか」ではなく「どの大学に合格したか」で決まります。

このことから、日本は「高学歴社会」ではなく「合格歴社会」と言われています。カタカナにすると濁点の位置が移動しただけですが、その意味は大きく異なります。この経験から、いつかは教育に携わり、「合格歴社会」を「高学歴社会」にしたいと考えるようになりました。

キャリア形成と意思決定に関する知見

インタビュアー
社会や働き方の変化が進む中で、これから求められる人材像をどのように捉えていますか?
井上教授
井上先生

社会や働き方の変化が進む現在の日本では、自らのキャリアを自らで決めることができる人間、これが望まれる人材像です。

日本では戦後、年功序列と終身雇用制が定着しました。終身雇用や年功序列というのは、ある企業に就職ならぬ就社して、多くの部門をジョブローテーションしながら、自らの適性を見つけ、長期にわたりスキルを高め、それに応じて給与や役職も上がっていくという制度です。

この仕組みの中では、キャリアの主体は社員ではなく、会社でした。すなわち、会社が準備したキャリアパスに従ってスキルをアップをしていけば、社員も会社もハッピーになる仕組みでした。この制度も決して悪いものではありません。

ところが年功序列と終身雇用制が崩れていく中で、現代ではキャリアは会社から与えられるものではなく、社員である個人が自ら切り開いていくものになりました。

したがって、学校でキャリア教育が必要になり、それは社会に出る直前の最終学歴となる学校だけではなく、卒業後の進路が進学となる可能性が高い中学校や高校でも必要となっているのです。

転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス

インタビュアー
変化が早い時代の中、キャリアを築いていく上で大切にすべき姿勢や考え方は何でしょうか?
井上教授
井上先生

働き方の変化については、認識している人も多いと思いますが、キャリアの主体が会社から個人に移ってきたことについては、意外と認識されていないように思います

これまでの回答の繰り返しになりますが、社会や働き方が変化し、年功序列や終身雇用制が崩壊している現代においては、大学(学校)での学びが評価される社会に変化してほしいと思っています。学びが評価されないのであれば、大学(学校)や大学生はこれまでのままでよいと安住してしまうのではないでしょうか。

インタビュアー
最後に、これからキャリアを築こうとする方へのメッセージをお願いします。
井上教授
井上先生

キャリアの主体が会社であった時代は「どの会社に入ったか」が重要でした。まさに「合格歴社会」です。

しかし、キャリアの主体は会社ではなく個人になり、どのように自らのキャリアを実現するかが問われる「高学歴社会」になりました。「高学歴社会」を生き抜くための大学での学び、さらには、卒業してからの学びを大切にしてください。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。転職には不安や迷いはつきものですが、キャリアを自ら切り開けるように学んでいきたいと思いました。

大妻女子大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、大妻女子大学で教授を務められている井上俊也先生です。

名称 大妻女子大学
所在地 〒102-8357 東京都千代田区三番町12番地
大学HP https://www.otsuma.ac.jp/