今回は第一工科大学で教授を務める仮屋孝二先生に、「キャリアにおける意思決定と自己理解の重要性」についてインタビューをさせていただきました。制御工学 、金属疲労 、自動車工学を研究されている仮屋先生に、キャリアの転機における考え方や効果的な意思決定のプロセスについてお伺いします。
現在の研究されている分野・具体的なご活動内容について
大学の研究室では、自動車用前照灯の照射特性に関する研究を行っています。近年、自動車の電動化や電子化が急速に進む中で、前照灯の機能も年々高度化しています。その前照灯の配光特性と最高光度点の関係、および照射特性がもたらすさまざまな影響についても調査しています。とくに、高齢者や視野狭窄症の方々における有効視野への影響を研究しています。
高強度材料の疲労強度に関する研究において、高強度AI合金への表面改質技術(ショットピーニング処理)による、疲労強度の向上や湿度の影響を明らかにしました。これにより、燃費の向上に寄与する材料置換の可能性について検討を進めています。
最近の自動車業界は、機械工学・電気電子工学・情報工学が融合する時代であり、メーカー単体から「モビリティ・エコシステム全体で価値を創る時代」へと変わりつつあります。
このような変化の中で、エンジニアには単一分野の知識だけでなく、システム全体を俯瞰する力と柔軟な発想が求められています。“自動車=総合工学の結晶”という言葉は、今まさに現実のものになりつつあります。
研究者としてのこれまでのご経歴・キャリアパス

これまでのキャリアで最も役立ったのは、特定の技術よりも「課題を構造的に捉え、解決策を考え抜く力」でした。
自動車をはじめとする機械システムの分野は、機械・電気・情報など多くの専門が交わる領域です。
その中で、自分の専門を他分野の人にわかりやすく伝え、協力しながら課題を解決する「協働力」が非常に重要だと感じています。また、現場を知る経験も大きな財産です。
実際の製造や整備の現場で得た気づきが、研究や教育に深みを与えてくれました。
技術が急速に進化する今だからこそ、基礎を大切にし、学び続ける姿勢と柔軟な発想が、長いキャリアを支える最も大きな力になると思います。
現在の自動車業界に関する質問
自動車業界はいま、「100年に一度の変革期」にあると言われています。これまで機械中心だった自動車が、電動化・電子制御化・知能化によって「走るコンピュータ」へと進化しています。
また、脱炭素社会への対応としてEVやFCVの普及が進み、製造だけでなくエネルギー・通信・IT産業との連携が不可欠になりました。自動車メーカー単体の時代から、「モビリティ・エコシステム全体で価値を創る時代」へと変わりつつあります。
自動車業界のキャリアは、車両開発・設計・生産技術・品質管理といった従来の技術職に加え、最近ではソフトウェア開発、データ解析、AI制御、エネルギーマネジメント、モビリティサービスなど、新しい専門領域が広がっています。また、完成車メーカーだけでなく、サプライヤー企業、電子部品メーカー、IT企業、さらには再生エネルギーやインフラ関連企業も自動車分野と深く結びついています。
転職者・キャリア形成中の方へのアドバイス

転職やキャリア形成を考える際には、「自分の経験をどの技術分野に活かせるか」「どんな新しい知識を組み合わせられるか」を意識することが重要でしょう。キャリア形成の本質は「積み上げ」よりも「つなげる」ことにあります。
自動車業界は今、電動化・自動運転・コネクティッド化などの波の中で、これまでにないスピードで変化しています。この変化は、決して若手や新卒者だけのものではありません。
むしろ、実務経験を持つエンジニアや技術者が、新しい領域で力を発揮できる時代になっています。
過去の経験をリセットするのではなく、これまでの専門性に新しいスキルを重ねることが、大きな武器になります。
第一工科大学の基本情報
今回インタビューにご協力いただいた先生は、第一工科大学で教授を務められている仮屋孝二先生です。
| 名称 | 第一工科大学 |
|---|---|
| 所在地 | 〒899-4332 鹿児島県霧島市国分中央1-10-2 |
| 大学HP | https://kagoshima.daiichi-koudai.ac.jp/ |